顎関節症と診断された方、あるいは顎の不調を感じている方で、「こめかみが痛い」という症状に悩まされていませんか?このこめかみの痛みは、顎関節症と深く関係していることが少なくありません。実は、その痛みの多くは、顎関節症によって引き起こされる側頭筋の過度な緊張が原因です。この記事では、顎関節症が原因でこめかみが痛むメカニズムを詳しく解説し、ご自宅で簡単にできる効果的なセルフケアや、痛みを和らげるための日常生活の工夫を具体的にご紹介します。また、どのような場合に専門家への相談を検討すべきかについても触れていますので、ぜひご自身の状態と照らし合わせながら読み進めてみてください。
1. 顎関節症でこめかみが痛いのはなぜ?
顎関節症を抱えている方の中には、こめかみの痛みに悩まされている方も少なくありません。このこめかみの痛みは、一見すると顎とは関係ないように思えるかもしれませんが、実は顎関節症と深く関連しています。ここでは、なぜ顎関節症がこめかみの痛みを引き起こすのか、そのメカニズムと原因について詳しく解説いたします。
1.1 こめかみの痛みの正体は側頭筋の緊張
こめかみに感じる痛みの多くは、「側頭筋」と呼ばれる筋肉の緊張が原因となっています。側頭筋は、頭の側面から耳の上あたりにかけて扇状に広がる大きな筋肉で、咀嚼(そしゃく)筋群の一つです。この筋肉は、口を閉じたり、奥歯を強く噛み締めたりする際に重要な役割を担っています。
顎関節症によって顎関節の動きに問題が生じると、この側頭筋に過度な負担がかかることがあります。例えば、顎の動きがスムーズでなかったり、特定の筋肉ばかりが使われたりすることで、側頭筋が常に緊張した状態になり、硬くなってしまいます。この筋肉の緊張や疲労が、こめかみ周辺に痛みとして現れるのです。また、側頭筋の緊張は、いわゆる緊張性頭痛の一因となることもあります。こめかみの痛みは、単なる頭痛ではなく、顎関節症からくる筋肉の不調のサインである可能性が高いと言えるでしょう。
1.2 顎関節症が側頭筋に影響を与えるメカニズム
顎関節症が側頭筋に影響を与え、こめかみの痛みを引き起こすメカニズムは複雑ですが、主に以下のような連鎖反応によって生じます。
- 顎関節の機能不全
顎関節症は、顎関節そのものや、関節を構成する軟骨、靭帯、関節円板などに問題が生じる状態です。これにより、口を開け閉めする際に異音が生じたり、顎がスムーズに動かせなくなったりします。 - 咀嚼筋群のアンバランス
顎関節に不調があると、下顎の動きが制限されたり、ずれたりします。この不自然な動きを補おうとして、顎の周囲にある咀嚼筋群(咬筋、内側翼突筋、外側翼突筋、そして側頭筋)が過剰に働くことになります。特に、下顎を正しい位置に保とうとする力が強まり、側頭筋に大きな負担がかかります。 - 側頭筋の持続的な緊張と疲労
不自然な咀嚼運動や、無意識の食いしばりなどが続くと、側頭筋は休む間もなく働き続け、持続的に緊張します。この状態が長く続くと、筋肉の血行が悪くなり、疲労物質が蓄積されやすくなります。結果として、筋肉の炎症やこわばりが生じ、こめかみの痛みとして感じられるようになるのです。 - 神経への影響
側頭筋の緊張が強まると、その周辺を通る神経が圧迫されることもあります。これにより、神経性の痛みやしびれとしてこめかみや頭部に症状が広がる可能性も考えられます。
このように、顎関節の不調が咀嚼筋群全体のバランスを崩し、特に側頭筋に集中して過剰な負荷がかかることで、こめかみの痛みが引き起こされると考えられます。
1.3 顎関節症を引き起こす主な原因
こめかみの痛みの根本原因である顎関節症は、単一の原因で発症することは少なく、複数の要因が複雑に絡み合って引き起こされることが多いです。主な原因を理解することで、症状の改善に向けた対策を立てやすくなります。
1.3.1 食いしばりや歯ぎしり
無意識のうちに行われる食いしばりや歯ぎしりは、顎関節症の最も一般的な原因の一つです。特に睡眠中に起こることが多く、日中の何倍もの力が顎にかかると言われています。
| 現象 | 特徴 | 顎関節への影響 |
|---|---|---|
| 食いしばり(クレンチング) | 上下の歯を強く噛み締め、持続的に力を入れる状態。音が出ないため、自覚しにくい。 | 咀嚼筋群(特に咬筋、側頭筋)に過度な負担がかかり、緊張と疲労が蓄積する。 顎関節に垂直方向の強い圧力がかかり、関節円板のずれや変形を招く。 歯の摩耗や歯周組織への負担も大きい。 |
| 歯ぎしり(グラインディング) | 上下の歯を強く擦り合わせる状態。特徴的な音がすることが多い。 | 咀嚼筋群に加えて、顎関節に横方向のねじれるような力が加わる。 関節円板や靭帯に損傷を与えやすく、顎関節の炎症を引き起こす可能性がある。 歯の広範囲な摩耗や欠けの原因となる。 |
これらの習慣は、顎関節やその周囲の筋肉に継続的なストレスと過剰な負荷を与え、顎関節の構造的な問題や筋肉の緊張を引き起こし、こめかみの痛みへとつながります。
1.3.2 ストレスと緊張
現代社会において避けられないストレスも、顎関節症の大きな原因となります。精神的なストレスや緊張は、自律神経のバランスを乱し、無意識のうちに全身の筋肉を硬直させてしまいます。
- 筋肉の収縮
ストレスを感じると、体は防御反応として筋肉を緊張させます。特に、顎周りの咀嚼筋群はストレスの影響を受けやすく、無意識のうちに力が入りやすくなります。これにより、食いしばりや歯ぎしりが誘発されることもあります。 - 自律神経の乱れ
ストレスが慢性化すると、交感神経が優位になり、リラックスしにくい状態が続きます。この状態では、顎関節や筋肉を休ませることができず、症状が悪化しやすくなります。
精神的な緊張が続くと、顎関節への負担が増大し、こめかみの痛みを含む様々な顎関節症の症状を引き起こす原因となるのです。
1.3.3 悪い姿勢と体の歪み
意外に思われるかもしれませんが、姿勢の悪さや体の歪みも顎関節症に深く関係しています。私たちの体は全身が連動しており、特に頭の位置は顎関節に大きな影響を与えます。
- 猫背やストレートネック
猫背やストレートネックのような姿勢は、頭が体の重心よりも前に突き出た状態になります。この状態では、頭の重さを支えるために首や肩の筋肉に過度な負担がかかり、同時に下顎の位置も前方にずれてしまいます。 - 全身のバランスの崩れ
体のどこかに歪みがあると、それを補うために他の部分に無理な力がかかります。例えば、骨盤の歪みが全身のバランスを崩し、結果として顎関節にも影響を与えることがあります。
このような不自然な頭の位置や全身の歪みは、顎関節に常に不適切な力が加わることになり、顎関節の機能不全や咀嚼筋の緊張を招き、こめかみの痛みを引き起こす原因となります。
1.3.4 噛み合わせの不調
歯並びや歯の治療、欠損などによる噛み合わせの不調も、顎関節症の重要な原因の一つです。上下の歯が正しく噛み合わない状態は、顎関節に偏った負担をかけ、顎の動きを妨げます。
- 不正咬合
歯並びが悪い(不正咬合)と、特定の歯にばかり力がかかったり、顎関節が無理な位置で動かされたりします。これにより、顎関節や周囲の筋肉に負担がかかります。 - 歯科治療の影響
過去の歯科治療で入れた詰め物や被せ物が合っていない場合や、歯が抜けたままになっている場合も、噛み合わせのバランスが崩れ、顎関節に悪影響を与えることがあります。 - 偏咀嚼(片側だけで噛む癖)
左右どちらか片側だけで食べ物を噛む癖があると、片側の顎関節や咀嚼筋にばかり負担がかかり、顎関節症の原因となることがあります。
噛み合わせの不調は、顎関節の正常な動きを阻害し、咀嚼筋、特に側頭筋に過剰な緊張をもたらすことで、こめかみの痛みを引き起こす要因となるのです。
2. 顎関節症のこめかみ痛を和らげる簡単セルフケア
顎関節症によるこめかみの痛みは、日常生活に大きな影響を与えます。しかし、ご自宅で手軽にできるセルフケアを継続することで、症状の緩和や再発の予防が期待できます。ここでは、特にこめかみの痛みに効果的なマッサージやストレッチ、そして日々の生活で気をつけたいポイントをご紹介します。
2.1 こめかみと側頭筋のマッサージ
こめかみの痛みの多くは、顎の動きと連動する側頭筋の過度な緊張が原因です。この側頭筋を優しくほぐし、血行を促進することで、痛みの軽減につながります。
2.1.1 優しくほぐすマッサージのやり方
側頭筋は、耳の真上からこめかみ、そして頭の側面にかけて広がる扇状の筋肉です。この部分を意識して、心地よいと感じる強さでマッサージを行いましょう。
| ステップ | 内容 | ポイント |
|---|---|---|
| 1. 準備 | 手を清潔にし、リラックスできる体勢をとりましょう。指の腹を使うため、爪は短く整えておくと安心です。 | 深呼吸をして、心身ともに落ち着かせることが大切です。 |
| 2. 位置確認 | 両手の指の腹をこめかみから耳の上のあたりに置きます。顎を軽く開け閉めすると、筋肉の動きを感じやすいでしょう。 | 特に硬くなっていると感じる部分や、押すと少し痛みを感じる部分を重点的に探します。 |
| 3. ほぐし方 | 小さな円を描くように、優しく圧をかけながらマッサージします。ゆっくりと奥に沈み込ませるようなイメージです。 | 痛みを感じない程度の心地よい強さで行いましょう。強く押しすぎると、かえって筋肉が緊張してしまうことがあります。 |
| 4. 範囲 | こめかみだけでなく、頭の側面や耳の周りまで、側頭筋全体を意識して広範囲にほぐします。 | 特に咀嚼筋の一部でもあるため、食事の後に緊張を感じやすい方もいらっしゃいます。 |
| 5. 時間と頻度 | 片側2~3分を目安に、ゆっくりと行います。1日に数回、特に緊張を感じた時や入浴後などに行うと効果的です。 | 毎日継続することで、筋肉の柔軟性が高まり、痛みの予防にもつながります。 |
マッサージ中は、ゆっくりと深い呼吸を意識すると、よりリラックス効果が高まります。筋肉がじんわりと温かくなる感覚があれば、血行が促進されている証拠です。無理のない範囲で、ご自身のペースで行ってください。
2.1.2 効果的なツボ押し
こめかみ周辺には、頭痛や目の疲れ、そして顎関節の不調に効果があるとされるツボがいくつかあります。マッサージと合わせてツボ押しを行うことで、さらに高いリラックス効果と痛みの緩和が期待できます。
| ツボの名称 | 位置 | 押し方 | 期待できる効果 |
|---|---|---|---|
| 太陽(たいよう) | こめかみの中央、眉尻と目尻の中間から少し外側に位置します。 | 人差し指か中指の腹で、ゆっくりと垂直に押します。5秒ほどかけて押し、ゆっくりと力を抜く動作を3~5回繰り返します。 | こめかみの痛み、頭痛、目の疲れの緩和。 |
| 角孫(かくそん) | 耳の一番高い部分を、指でなぞりながら頭頂方向へたどった際に触れるくぼみにあります。 | 親指の腹で、少し上方向へ押し上げるようにします。心地よいと感じる程度の強さで、ゆっくりと押しましょう。 | 側頭部の緊張緩和、顎関節の不調、耳鳴りの緩和。 |
| 頷厭(がんえん) | 角孫から前方に指一本分ほど進んだ、髪の生え際あたりに位置します。 | 指の腹で、小さな円を描くように優しくマッサージしながら押します。 | 顎関節周辺の血行促進、頭痛の緩和。 |
ツボ押しは、食後すぐや飲酒時は避け、体調が良い時に行いましょう。また、押す強さは「気持ちいい」と感じる程度にとどめ、決して無理はしないでください。痛みが強い場合は中止し、専門家にご相談ください。
2.2 口周りのストレッチと体操
顎関節症によるこめかみ痛の改善には、顎関節そのものの動きをスムーズにし、周辺の筋肉を柔軟に保つことが非常に重要です。口周りのストレッチと体操は、顎関節の負担を軽減し、緊張を和らげる効果があります。
2.2.1 顎関節をリラックスさせるストレッチ
顎関節の周りの筋肉は、緊張しやすい傾向があります。以下のストレッチで、顎の力を抜き、リラックスした状態を目指しましょう。
- 深呼吸でリラックス まず、椅子に座り、背筋を軽く伸ばします。肩の力を抜き、ゆっくりと鼻から息を吸い込み、口から長く吐き出します。これを数回繰り返し、全身の緊張をほぐしましょう。
- 舌の位置を意識 口を軽く閉じ、舌の先を上あごの天井、前歯の少し奥にそっとつけます。この位置が、顎が最もリラックスできる自然なポジションとされています。この状態を意識して、しばらくキープします。
- 顎の開閉ストレッチ 舌を上あごにつけたまま、ゆっくりと口を少しだけ開けます。このとき、顎に力が入らないように、重力に任せて自然に開くイメージです。痛みを感じない範囲で、無理なく行います。数秒キープし、ゆっくりと口を閉じます。この動作を5~10回繰り返しましょう。
- 左右への顎の移動 口を軽く閉じた状態で、顎をゆっくりと左右にスライドさせます。これも痛みを感じない範囲で行い、顎の動きの偏りがないか確認しながら行いましょう。片側5回ずつ程度が目安です。
これらのストレッチは、鏡を見ながら行うと、顎の動きや偏りを客観的に確認できます。特に、顎を開く際にまっすぐ開いているか、左右にずれていないかなどをチェックしましょう。痛みを感じる場合はすぐに中止し、無理はしないでください。
2.2.2 開口訓練で可動域を広げる
顎関節症によって顎の開口が制限されている場合、無理のない範囲で徐々に可動域を広げる訓練も有効です。ただし、痛みがある場合は行わないでください。
- 指を使った開口確認 人差し指、中指、薬指の3本を縦に揃え、口の中に無理なく入るか試します。通常、指3本がスムーズに入るのが理想的な開口度とされています。現在の開口度を確認することから始めましょう。
- ゆっくりとした開口訓練 鏡を見ながら、顎が左右にずれないように、ゆっくりと口を開けていきます。痛みを感じる手前で止め、数秒間その状態をキープします。その後、ゆっくりと口を閉じます。この動作を10回程度繰り返します。
- 徐々に開口度を広げる 毎日少しずつ、開口度を広げる意識を持って訓練を続けます。例えば、指2本しか入らなかった方が、数日かけて2.5本、3本と増やしていくイメージです。決して無理に広げようとせず、「もう一歩広げられそう」という感覚で止めましょう。
- 開口時の注意点 開口訓練中は、顎関節から「カクカク」といった音や痛みが生じることがあります。強い痛みや不快感がある場合は、すぐに中止してください。また、訓練の前後には、側頭筋や咀嚼筋のマッサージを行うと、より効果的です。
開口訓練は、継続が非常に重要です。焦らず、ご自身の顎の状態と向き合いながら、少しずつ可動域を広げていきましょう。訓練によって顎の動きがスムーズになることで、こめかみへの負担も軽減されます。
2.3 日常生活で気をつけたいこと
顎関節症のこめかみ痛を和らげるためには、セルフケアだけでなく、日々の生活習慣を見直すことも欠かせません。無意識に行っている習慣が、顎関節に負担をかけている可能性があるため、意識的に改善していくことが大切です。
2.3.1 食いしばりや歯ぎしり対策
日中の食いしばりや夜間の歯ぎしりは、顎関節や側頭筋に大きな負担をかけ、こめかみ痛の主な原因となります。これらの習慣を改善するための対策を講じましょう。
- 日中の意識付け 日中、仕事や集中している時に無意識に歯を食いしばっていることはありませんか。デスク周りやPCの画面に「歯を離す」「リラックス」などのメモを貼ることで、意識的に顎の力を抜く習慣をつけましょう。上下の歯は、通常は接触していない状態が理想的です。
- 食習慣の見直し 硬い食べ物や、長時間噛み続ける必要のある食べ物は、顎関節に負担をかけやすいです。一時的に柔らかい食事を心がけ、顎への負担を軽減しましょう。一口サイズに切って食べるなど、工夫も有効です。
- 夜間の対策 寝ている間の歯ぎしりは無意識のため、ご自身でコントロールすることは難しいです。しかし、寝る前のリラックスタイムを設けたり、寝る直前のカフェイン摂取を控えるなど、睡眠の質を高めることで、歯ぎしりの頻度や強度を軽減できる場合があります。
- 頬杖や顎に負担をかける癖の改善 頬杖をつく、うつ伏せで寝る、電話を肩と顎で挟むといった癖は、顎関節に偏った負担をかけます。これらの癖を意識的にやめるように心がけましょう。
これらの対策は、継続することで効果を発揮します。すぐに結果が出なくても、諦めずに続けてみてください。
2.3.2 姿勢の改善と体のバランス
顎関節は、全身のバランスと密接に関わっています。特に、首や肩の姿勢は顎関節に大きな影響を与えるため、正しい姿勢を意識することがこめかみ痛の軽減につながります。
- 猫背やスマホ首の改善 猫背やスマートフォンを長時間見る際のうつむき姿勢(スマホ首)は、頭が前に出て首や肩に負担がかかり、結果として顎関節にも影響を及ぼします。意識的に背筋を伸ばし、頭を体の真上に乗せるイメージで姿勢を正しましょう。
- デスクワーク時の工夫 長時間デスクワークを行う際は、椅子の高さを調整し、足の裏が床にしっかりつくようにします。モニターは目線の高さに合わせ、首が前に出すぎないように注意しましょう。30分に一度は立ち上がって、軽くストレッチをする習慣をつけるのも良い方法です。
- 肩甲骨を意識した姿勢 肩甲骨を軽く寄せるように意識すると、自然と胸が開き、正しい姿勢を保ちやすくなります。肩の力を抜き、リラックスした状態を保つことが大切です。
- 全身のストレッチ 首や肩、背中の筋肉が硬くなると、顎関節への負担が増します。日頃から首や肩のストレッチを取り入れ、全身の柔軟性を保つようにしましょう。特に、首をゆっくりと回したり、肩を大きく回したりする運動は効果的です。
正しい姿勢を保つことは、全身の血行促進にもつながり、顎関節だけでなく体全体の健康にも良い影響を与えます。日々の生活の中で、常に自分の姿勢を意識する習慣をつけましょう。
2.3.3 ストレスを軽減する方法
ストレスは、無意識のうちに食いしばりや歯ぎしりを引き起こし、顎関節症の症状を悪化させる大きな要因となります。心身のリラックスを促し、ストレスを上手に管理することが、こめかみ痛の緩和には不可欠です。
- リラックスできる時間を作る 忙しい毎日の中でも、意識的にリラックスできる時間を設けましょう。好きな音楽を聴く、アロマを焚く、温かいお風呂にゆっくり浸かるなど、ご自身にとって心地よいと感じる方法を見つけてください。
- 深呼吸や瞑想 深い呼吸は、心身を落ち着かせ、ストレスホルモンの分泌を抑える効果があります。静かな場所で、ゆっくりと鼻から息を吸い込み、お腹を膨らませ、口からゆっくりと吐き出す腹式呼吸を数分間行うだけでも、リラックス効果が得られます。簡単な瞑想も、心の落ち着きを取り戻すのに役立ちます。
- 適度な運動 ウォーキングや軽いジョギング、ヨガなどの適度な運動は、ストレス解消に非常に効果的です。体を動かすことで気分転換になり、心身のリフレッシュにつながります。無理のない範囲で、継続できる運動を見つけましょう。
- 十分な睡眠 睡眠不足は、体の回復力を低下させ、ストレスを感じやすくします。質の良い十分な睡眠をとることは、顎関節の回復にもつながります。寝る前にスマートフォンやパソコンの使用を控え、寝室の環境を整えるなど、安眠のための工夫をしましょう。
- 趣味や気分転換 好きなことに没頭する時間を持つことは、ストレス軽減に繋がります。趣味に打ち込んだり、友人と会話を楽しんだり、自然の中で過ごしたりと、気分転換になる活動を積極的に取り入れましょう。
ストレスは完全にゼロにすることは難しいですが、上手に付き合い、軽減することで、顎関節症によるこめかみ痛の症状を和らげることができます。ご自身の心と体の声に耳を傾け、無理なく続けられる方法を見つけてください。
3. こんな場合は専門家への相談を検討しましょう
3.1 受診の目安となる症状
顎関節症によるこめかみの痛みは、セルフケアで改善することも多いですが、時には専門的な診断や介入が必要となる場合があります。ご自身の症状が以下のいずれかに当てはまる場合は、専門家への相談を検討することをおすすめいたします。
特に、痛みが徐々に強くなっている、日常生活に大きな支障が出ている、セルフケアを続けても症状が改善しないといった状況では、放置せずに専門家の意見を聞くことが大切です。
| 症状の種類 | 専門家への相談を検討すべき状況 |
|---|---|
| 痛みの強さ・頻度 | こめかみの痛みがズキズキと強く、市販の鎮痛剤が効きにくい場合や、痛みが毎日続く、あるいは徐々に悪化している場合。 |
| 口の開けにくさ(開口障害) | 口を大きく開けることができず、指2本分(約3センチメートル)も開かない場合。また、口を開けようとすると激しい痛みが伴う場合。 |
| 顎の音と動き | 口を開け閉めする際に、顎関節から「カクカク」「ジャリジャリ」といった音が頻繁に鳴り、その音が痛みや開口障害を伴う場合。あるいは、顎が左右に大きくずれる、引っかかって動かなくなる(ロック)といった症状がある場合。 |
| 顔や全身への影響 | こめかみの痛みだけでなく、頭痛、首や肩のひどいこり、耳鳴り、めまい、手足のしびれなどが併発し、日常生活に支障をきたしている場合。また、口を開けたときに顔が歪む、左右非対称が顕著になるといった見た目の変化がある場合。 |
| 精神的な影響 | 顎関節症による痛みや不快感が原因で、食欲不振、不眠、集中力の低下、気分の落ち込みなどが続き、精神的な負担が大きくなっている場合。 |
3.2 何科を受診すれば良い?
顎関節症は、その症状が多岐にわたるため、どの専門家に相談すれば良いか迷われる方もいらっしゃるかもしれません。
顎関節症の診断や治療の第一歩として、まずお口周りの専門家である歯科に相談することが一般的です。特に、口腔外科を標榜している歯科では、顎関節に関する専門的な知識と経験を持つ専門家が在籍していることが多く、より詳細な診断や治療方針の提案を受けることができるでしょう。
また、近年では顎関節症に特化した専門的な施設も増えてきています。ご自身の症状が複雑であると感じる場合や、より専門的なアプローチを希望される場合は、顎関節症の診断や治療に強みを持つ専門機関を探してみるのも一つの方法です。
大切なのは、ご自身の症状や状況に合った適切な専門家を見つけ、早期に相談することです。適切な診断とアドバイスを受けることで、症状の改善に向けた具体的なステップを踏み出すことができます。
4. まとめ
顎関節症によってこめかみが痛むのは、主に顎の不調が原因で、こめかみに広がる側頭筋という筋肉に過度な負担がかかり、緊張してしまうためです。この側頭筋の緊張は、日々の食いしばりや歯ぎしり、精神的なストレス、悪い姿勢、さらには噛み合わせの不調といった様々な要因によって引き起こされることが少なくありません。
ご自宅でできるセルフケアとして、こめかみや側頭筋の優しくほぐすマッサージ、顎関節をリラックスさせる口周りのストレッチや開口訓練、そして食いしばりや歯ぎしり対策、姿勢の改善、ストレス軽減などが挙げられます。これらのセルフケアを日常生活に継続的に取り入れることで、側頭筋の緊張が和らぎ、こめかみの痛みの緩和が期待できます。
しかし、セルフケアを続けても症状が改善しない場合や、口が大きく開けにくい、顎からカクカク、ジャリジャリといった音が鳴る、めまいや耳鳴り、肩こりといった他の症状が伴う場合は、専門医への相談が不可欠です。顎関節症は放置すると悪化する可能性もありますので、自己判断せずに、歯科口腔外科や口腔外科を受診し、適切な診断と治療を受けることが重要です。
顎関節症によるこめかみの痛みは、日常生活に大きな影響を及ぼすことがあります。どうぞお一人で悩まず、気になる症状がある場合は、専門家にご相談ください。何かお困りごとがありましたら当院へお問い合わせください。

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